『くるり・岸田繁×ヨーロッパ企画・上田誠』対談まえがき

いまがすでに懐かしい。
 
写真を撮るときはつねにそんなことを考えています。なぜなら写真には必ず「もうそこには存在しない」ものが写っているからです。それは、地球に届くまで何年もかかるという、はるか遠くの星の光を見るのにも似ています。つまり、写真とは、未来から過去という現在を見るように、「終わりゆくいま」をおさめようとする衝動的な行為なのだと思います。ゆえに写真と時間は切っても切れない関係にあるんですね。いや、むしろ時間そのものともいえます。
 
さて、前置きが長くなりました。記念すべき『リバー、流れないでよ』が劇場公開された日、しかも京都にて、あらかじめ出会うことが宿命づけられた(?)二人の作家が初めて顔を合わせることになりました。およそ思いつく条件はすべてそろったと思われるこの撮影、すわ、宇宙のビッグバンよろしく、互いを見つけた瞬間に対消滅さえ起こると危惧していました。しかし、そんな不安と期待をよそに、窓際の柔らかい陽光に照らされた二人のあいだには終始和やかな空気が漂っており、妄想は無駄に終わったのでした。

ところで、私がこの撮影を任されたのには理由があったのです。ヨーロッパ企画の作品のスチールを担当しているからとか、くるりのミュージックビデオを監督していたからとか、すでに両氏の領域の中間にいたからというのは、そうたしかに。ただ個人的には、70年代後半生まれで、東京ではなくあえて関西を拠点に活動を続けているというその共通点を、同じく自分もまた分かちあえる一人であるから、と思い込んでもいるのです。それがとても嬉しい。
 
そういえば、前述のMV“八月は僕の名前”は、奇しくも、大部分が1カット長回しという時間を描く映像でした。ああ、不思議な共通点を思わずにいられません。というより、上田さんと岸田さんが放つ強力な磁場に引きつけられた自然な結果だったのかもしれません。
 
<ここに生きている事が 懐かしい>とは、本映画主題歌“Smile”の最後に歌われる美しい一節。そうです、そうなんです! 本当にどこまでもつながっていくのだなあ、そんな気持ちを胸に二人を写真という時間のなかに閉じ込めました。ビッグバンな対談とともにぜひご覧ください。

このテキストはウェブメディア「CINRA」での両氏の対談のために寄稿したものになります。
 
くるり・岸田繁×ヨーロッパ企画・上田誠。どこか似てる「京都のおっさん」たちの初対談
https://www.cinra.net/article/202307-rivereurope1_ymmts
ヨーロッパ企画・上田誠にとって、タイムリープ作品とは?くるり・岸田繁と語る「創作と時間」の話
https://www.cinra.net/article/202307-rivereurope2_ymmts