フォトグラファーはみな渋谷を目指す

淡路島生まれ大阪在住、去年、神戸にアトリエを構えました。でも渋谷にはよくいます―― 『relax』復刊号に寄稿したエッセイのプロフィールにはこう書いた。東京に住んでいないくせに、長いときには3週間くらい滞在したりする。そんな生活(?)を続けていると裏道にも詳しくなる。あ、ここを抜けたらここに出るんだ! という小さな発見に感動を覚えたり。

 

そういえば、我々フォトグラファーたちの朝は早い。だいたいは雇い主が違っても渋谷に大集合する。朝5時なんてのは当たり前で、駅の交番横の高架下にどこの高校の修学旅行かといわんばかりにロケバスが長蛇の列をなす。最後尾が宮益坂まで辿り着きそうなときもあるほど。困ったことにロケバスはどれも似ているし、新規の案件ともなればスタッフもお互いの顔を知らない。とりあえずそれらしいバスに乗り込んで10分くらい座った頃に「あ、これ違う」みたいなことはわりとあるあるなのだ(ですよね?)。見当違いのバスなのに朝ごはんの弁当を受け取ったりさえする。でもあるあるだから大丈夫。

さて、先日、担当編集の西尾さんから連絡があって渋谷の道玄坂を撮ることになった。見開きで1カットだけ。しかも、東急本店前の交差点で早朝に、という具体的なリクエスト。言われた通り早起きして行ってきた。いや実際は寝坊した。一人の撮影だからよかったものの、これがロケバスなら置いていかれていただろう。小1時間ほど交差点を行ったりきたりして、これって道玄坂? みたいな写真を何枚か撮った。どんな感じになったかは復刊号をぜひご覧ください。

この記事は、2020年11月に1号限りで復刊した雑誌『relax』の出版を記念してつくられたフリーペーパーに寄稿したエッセイを加筆、修正したものになります。